東京地方裁判所 昭和56年(特わ)3791号 判決 1982年5月07日
本店所在地
東京都新宿区歌舞伎町一丁目六番一四号 東通ビル三階
株式会社ゴードン
(右代表者代表取締役蒲田道雄)
本店所在地
東京都中央区銀座八丁目一二番六号
有限会社ハイネス
(右代表者代表取締役蒲田道雄)
本籍
東京都新宿区市谷甲良町三五番地
住居
東京都渋谷区千駄ケ谷一丁目一三番二号
会社役員
蒲田道雄
昭和六年二月一一日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官江川功出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社ゴードンを罰金八〇〇万円に、被告人有限会社ハイネスを罰金五〇〇万円に、被告人蒲田道雄を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人蒲田道雄に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社ゴードン(以下「被告会社ゴードン」という。)は、東京都新宿区歌舞伎町一丁目六番一四号東通ビル三階(昭和五三年六月三〇日以前は、東京都新宿区歌舞伎町六番地)に本店を置き、飲食店の経営を目的とする資本金四〇〇万円の株式会社、被告人有限会社ハイネス(以下「被告会社ハイネス」という。)は、東京都中央区銀座八丁目一二番六号に本店を置き、飲食店の経営を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人蒲田道雄は、右各被告会社の代表取締役として、右各会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人蒲田道雄は、右各被告会社の業務に関し、各被告会社の法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五三年二月一日から同五四年一月三一日までの事業年度における被告会社ゴードンの実際所得金額が三、〇四〇万二、一七八円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年三月一九日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所在の所轄淀橋税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が三五六万九、一八七円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五七年押第四七五号の一)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、一三二万〇、八〇〇円(別紙(五)税額計算書参照)を免れ
第二 昭和五三年二月一日から同五四年一月三一日までの事業年度における被告会社ハイネスの実際所得金額が二、二三四万五、一一二円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年三月二〇日、東京都中央区新富二丁目六番一号所在の所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が五〇九万一、二四〇円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の三)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額八〇九万八、〇〇〇円(別紙(六)税額計算書参照)を免れ
第三 昭和五四年二月一日から同五五年一月三一日までの事業年度における被告会社ゴードンの実際所得金額が四、三六一万三、〇八一円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年三月二九日、前記淀橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の二)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、六六〇万五、二〇〇円(別紙(五)税額計算書参照)を免れ
第四 昭和五四年二月一日から同五五年一月三一日までの事業年度における被告会社ハイネスの実際所得金額が二、二二九万四、五〇五円(別紙(四)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年三月二九日、前記京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の四)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額八〇七万七、六〇〇円(別紙(六)税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一 被告人蒲田道雄の当公判廷における供述
一 被告人蒲田道雄の検察官に対する供述調書四通
一 野村紀正(二通)及び宮本勝之の検察官に対する各供述調書
一 検察官、被告会社ゴードン、同ハイネス、被告人蒲田道雄及び以上被告人の弁護人加藤眞共同作成の合意書面のほか、
判示第一及び第三の各事業について
一 吉松英子の検察官に対する供述調書
一 淀橋税務署長作成の証明書
一 東京法務局新宿出張所登記官作成の登記簿謄本
一 押収してある被告会社ゴードンの法人税確定申告書二袋(昭和五七年押第四七五号の一及び二)
判示第二及び第四の各事実について
一 森光ふみ子の検察官に対する供述調書
一 京橋税務署長作成の証明書
一 東京法務局登記官作成の登記簿謄本
一 押収してある被告会社ハイネスの法人税確定申告書二袋(前四号の三及び四)
(法令の適用)
被告人蒲田道雄の判示各所為は、いずれも行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重した刑期の範囲内で同被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
さらに、被告人蒲田道雄の判示各所為は、いずれも被告会社ゴードン及び同ハイネスの業務に関してなされたものであるから、被告会社ゴードン及び同ハイネスについては、右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により判示各罪(被告会社ゴードンは判示第一及び第三、被告会社ハイネスは判示第二及び第四の各罪)につき同じく改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、判示第一及び第三の各罪、また判示第二及び第四の各罪はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、いずれも同法四八条二項により合算した各金額の範囲内で、被告会社ゴードンを罰金八〇〇万円に、被告会社ハイネスを罰金五〇〇万円にそれぞれ処することとする。
(量刑の事情)
本件は、都内の新宿や銀座等に店舗を出して三法人組織により飯食店業を営む被告人蒲田において、うち二法人につき各二事業年度にわたって法人税総計四、四〇〇万円余りを免れたという事案である。その犯行の動機について、被告人蒲田は料飲税の脱税や遊興費、生活費に充てる簿外資産の蓄積のためであると供述しているところ、こうした動機が酌量に値しないことはいうまでもない。犯行の手段も、売上除外のため二重帳簿を作成したうえ、その発覚を防止するため経理事務を行なう事務所を転々したり、これを秘密にしていたほか、他人名義の預金などもしていたことが認められる。しかも、被告人蒲田の供述によれば、こうした脱税は、程度の差こそあれ、法人設立時(被告会社ゴードンは昭和三九年、同ハイネスは同四三年)から行なってきたというのであって、その間何回か税務調査を受けながら、本件対象事業年度においても、欠損あるいは零の申告に終始しているのであり、納税意識の欠如は疑う余地がない。以上の諸点にかんがみると、その犯情は軽視することができない。
しかし、関与税理士において情を知りながら制止するどころか、むしろ犯行を容易にしていた疑いは濃厚であって、このことが被告人蒲田の脱税意思をより固めたものといえないではなく、ほ脱額も判示の程度に止まっている。被告人らには前科前歴もなく、本件を反省して査察にも協力し、その後修正申告をしたうえ、自宅を処分するなどして納税の大半を済ませていることが認められる。その他諸般の事情を総合勘案して、主文のとおり量刑する。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 小瀬保郎)
別紙(一) 修正損益計算書
株式会社ゴードン
自 昭和53年2月1日
至 昭和54年1月31日
<省略>
別紙(二) 修正損益計算書
有限会社ハイネス
自 昭和53年2月1日
至 昭和54年1月31日
<省略>
別紙(三) 修正損益計算書
株式会社ゴードン
自 昭和54年2月1日
至 昭和55年1月31日
<省略>
別紙(四) 修正損益計算書
有限会社ハイネス
自 昭和54年2月1日
至 昭和55年1月31日
<省略>
別紙(五)
税額計算書
株式会社ゴードン
<省略>
別紙(六)
税額計算書
有限会社ハイネス
<省略>